借地上の建て替え重要ポイント集|上手に更新するための全6ステップ

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借地上の建物の建て替えを検討したいけど、「一体どんな手続きが必要で、どのように検討を進めればよのか」がわからず悩んでいませんか?

「借地」は「地主から借りている土地」であるため、建て替えや転用・権利の売買等、何か事を起こそうとする際には、必ず地主の承諾や条件の改定・更新などが必要になってきます。

そのため、建て替える際には最低限の法律や慣習等を理解した上で、地主を巻き込みながら上手く検討を進めていかなければ、「地主の承諾が得られず苦労をする」「条件改定により計画が狂ってしまう」なんとことにもなりかねません。

このページでは、これまで土地活用のコンサルティングを業務として300人以上の不動産オーナーの最適な不動産有効活用について支援をしてきた筆者が、「借地上の建て替えで重要なポイントと上手な進め方」について、以下の流れに沿ってご紹介します。

このページをすべて読めば、「借地上の建て替えで迷うことなく、最善の計画が立てられる」ようになり、「自分にとってベストな資産活用」の検討に向けて、自信を持って第一歩を踏み出していただけるようになるでしょう。

※本ページの内容は、旧借地法に基づく借地(平成4年7月31日以前に設定された借地)についての実務的な内容をまとめてあります。新法(借地借家法)に基づく借地(平成4年7月31日以降に設定された借地)の場合には、一部内容が異なりますのでご注意下さい。

0. 借地上の建て替えでは「地主の承諾と条件改定」は必須

  • 地主にとっては「建て替え承諾」=「今後数十年間の自己利用の放棄」

借地は、地主から借りている土地ではありますが、法律上は借りている人(借地権者)の方が強く保護されており、地主が自らの事情だけで借地を返還してもらうことは非常に困難になっています。

逆に、借地権者からすれば、借地上に建物が建っていてそれを必要としている限り、たとえ地主から返還交渉があったとしても簡単に拒むことができます。

そのため、借地上の建物が新しくなると、地主にとっては「今後数十年間のその土地の自己利用可能性がほぼ無くなる」ということであることから、法律上、建て替えには地主の承諾が必要ということになっています。

また、「建て替え承諾」=「今後数十年間の自己利用の放棄(利用権利の提供)」であることから、意味的には新しく借地権を設定するのと同じことであり、承諾料(借地期間更新料)の支払いや地代等の条件の見直し・改定が行われるのが通常です。

承諾料の支払いや条件改定については、法律上の義務ではありませんが、現実的に地主の承諾を得るためにはほぼ必須といえます。

まずは、これらの前提を理解した上で、次章以降の6つのステップに沿って、建て替え計画を進めていきましょう。

Step1. 承諾料(更新料)の相場を知る

前提を理解したら、まずは承諾料(更新料)の相場を知ることが大切です。

これらの金額は高額になることが多いため、計画自体を左右する重要な要素になります。

借地に於ける承諾料(更新料)の相場
目的・種類 相場 内容
1. 単純に更新する
(借地権の更新料)
更地価格 × 2~5%程度 借地契約の期間更新のみ
2. 非堅固建物に建て替える
(建て替え承諾料)
更地価格 × 2~5%程度 同じ構造(同程度の耐久性)の建物への建て替えに伴う借地契約の改定
3. 非堅固から堅固建物に建て替える
(条件変更を伴う建て替え承諾料)
更地価格 × 10%程度 木造(非堅固建物)→鉄筋コンクリート造(堅固建物)等、条件変更を伴う建て替えによる借地契約の改定
4. 売却する
(借地権の譲渡承諾料)
借地価格 × 10%程度 名義書書換(名義変更)のみ

実は、承諾料(更新料)には、法律等の根拠となる決まった基準は存在していません。

そのため、あくまで地主との交渉により決めていくことになりますが、上記のように世の中の事例に基づくある程度の相場は存在しています。

上記のような相場があることを前提に、地主との相談を考えましょう。

1-1. 非堅固建物に建て替える場合(建て替え承諾料)

  • 更地価格 × 2~5%程度

建て替えに伴う借地更新の場合には、新築建物の構造(耐久性)によって相場が変わってきます

地主からすると、耐久性が長い建物(堅固建物)が建つと、その分長く自己利用可能性がなくなってしまうことから、新築建物が堅固建物(鉄筋コンクリート造や重量鉄骨造等)か非堅固建物(木造や軽量鉄骨造等)かは大きな差になります。

新築建物が非堅固建物である場合には、概ね更地価格(その土地の所有権を更地で売買した場合の実勢価格)の2~5%程度の中で判断されていることが多いです。

1-2. 非堅固から堅固建物に建て替える場合(条件変更を伴う建て替え承諾料)

  • 更地価格 × 10%程度

前項の新築建物の構造(耐久性)による相場変動に併せて、非堅固建物から堅固建物へ建て替えるといった地主側に不利な条件変更を伴う場合には、さらに相場が高くなる傾向があります。

これは、単純に耐久性が長くなることの他にも、木造から鉄筋コンクリート造等の場合では建物自体も高層化等で大きくなることがほとんどで、借地人が享受する利益が増えるため承諾料が高くなっても合意されやすいという側面も考えられます。

Step2. 地主へ事前相談して建て替え承諾を得る

前述の通り、建て替えの承諾は地主にとっても大きなことですので、礼儀や筋を通す意味でも事前に相談するべきです。

また、建築計画よりも先に、地主へ事前相談することにより、以下のような3つのメリットが得られます。

  1. 計画以前に事前相談された方が地主の心象が良くなる
  2. 地主からの要望等があれば先に聞ける
  3. そもそも地主の承諾取得についての難易度がわかり無駄な計画を立てずに済む

当然のことながら、いきなり“建て替えることのなったので承諾して下さい”と言われるよりも、“これから建て替えを検討したいのですが、その場合には承諾して頂けますか?と聞かれた方が心象がよくなり、良い対応をしてもらえる確率が上がります。

また、地主は正当事由なしに建て替えを拒否できないことから、最終的には承諾してもらえる確率は高いのですが、地主からの要望等が出てきて後で計画を修正するという無駄が省けます。

さらに、そもそも承諾取得に難航しそうな場合には、色々と計画を立てた後よりも、事前に把握できていた方が方向性や対策が検討しやすいというメリットもあります。

2-1. 地主の承諾が得られない場合の2つの対処法

  • 根気強く会話をして双方の妥協点を模索する
  • 裁判所に申し立てて「地主の承諾に代わる許可」をもらう

事前相談をして快く承諾してくれればよいのですが、地主との関係性や事情等によっては断固拒否という回答をされる場合もあり得ます。

また、建て替え自体はOKだが、後に交渉する承諾料や条件改定の内容が最終的に折り合わずに承諾が得られないという場合もあります。

その場合の対処法としては、上記の2つになるでしょう。

根気強く会話をして双方の妥協点を模索する

地主との関係性や拒否の理由にもよりますが、今後のことも考えると、可能であれば、根気強く会話を重ねながら双方が納得のいく妥協点を見つける方が得策といえます。

この際、相手に多くを妥協させることよりも、話し合いが平行線のまま多くの時間を費やしてしまうことによる機会損失を考えることが重要です。

仮に、賃貸住宅への建て替えであれば、1年遅れるだけで単純に数百万円単位の収益可能性を逃すことになりますし、自宅の場合でも早く新居暮らしができるに越したことはありません。

長い目で見て、多少多く自分が譲歩したとしても、早く話をまとめることを優先すべきでしょう。

裁判所に申し立てて「地主の承諾に代わる許可」をもらう

しかしながら、話し合いによる解決が難しい場合には、「裁判所から建て替え許可をもらって建て替える(借地非訟の申立)」という方法もあります。

借地非訟の申立の具体的な手続きと流れは下図のようになります。

(出典:裁判所公式ホームページ

この場合のデメリットとして、結論までに数ヶ月(概ね1年以内)の長い時間が掛かることと、様々な条件が客観的妥当性により判断されるため、借地権者(申立人)の意向に沿った結論になるとは限らないということが挙げられます。

地主側に建て替えを阻止するだけの正当事由がない場合には、基本的に建て替え許可されることになりますが、今後の地主との関係性悪化も懸念されるため、あくまで最終手段と考えましょう。

Step3. 建築計画を立てる

無事に地主からの建て替え承諾(最悪の場合には裁判所による建て替え許可)が得られそうであれば、いよいよ建て替えのための建築計画を立てましょう。

その際、建築費や解体費とは別に、前述した高額な承諾料が掛かることや建て替え後に地代が上がる可能性があること等も念頭に入れながら最適な計画を模索することが大切です。

建築計画を立てる際に理解しておくべき、検討〜アフターまでのおおまかな流れは以下の通りです。

現在では、無料で適切な業者にまとめて依頼できる一括資料請求サービス等もたくさんありますので、まずはそれらを活用して情報を集めるところから始めるとよいでしょう。

Step4. 資金計画を立てる

建築計画が粗方決まり、ある程度の金額が分かってきた段階で、承諾料等も含めた資金計画を立てます。

全てを自己資金で賄える人であれば、特段の計画は不要ですが、ローンで賄おうとしている人にとっては大切なステップです。

借地上の建て替えに於いてローンを借りる場合には、所有地での建て替えに於けるローンと異なり以下の2点に注意する必要があります。

  1. 土地(借地権)の担保評価が厳しくなることから融資額が厳しくなる
  2. 金融機関や計画によっては承諾料等の融資が困難になる可能性

借地の場合には、土地の評価に於いて借地権相当分しか担保評価がつかないのは当然として、流動性が低い(売りにくい)分、さらに評価額が厳しくなる傾向があります。

基本的に、金融機関は対象となる土地・建物の担保評価額以内の金額しか融資してくれませんので、計画によっては満額融資が下りない可能性が出てくるため注意が必要です。

また、金融機関によっては「承諾料等は建築資金ではない」として融資対象外と判断されるところもあります。

そのため、必ず複数の金融機関を当たり、条件を比較交渉することが大切です。

以下、資金計画を立てるにあたって最低限理解しておくべき重要なポイントを2つ解説していきます。

4-1. ローンには「アパートローン」と「住宅ローン」の2種類がある

建築(建て替え)のためのローンには、「アパートローン」と「住宅ローン」の2種類がありますが、それらは根本的に融資の目的が異なり、混同して使うことはできません。

「アパートローン」と「住宅ローン」は主に以下のような点で大きく違います。

アパートローンと住宅ローンの違い
アパートローン 住宅ローン
資金使途(目的) 賃貸用不動産 自己居住用不動産限定
借入期間 最長35年間 最長35年間
金利 ×(住宅ローンよりは高い) ○(低い)
返済原資 対象物件の賃料収入 借入人の年収 
審査ポイント 担保価値・事業収支の安全性・信用力 年収に基づく返済力・信用力
借入可能件数 限度なし(総合的な事業性次第) 年収に基づく限度あり
連帯保証人 原則必要(法定相続人等の事業承継者) 団信(保険)に入れば不要

上記のように、「住宅ローン」は借入人の年収から大方の審査ができてしまいますが、「アパートローン」は物件の事業性に対して審査されることから、特に「アパートローン」の融資条件や審査基準は金融機関によって変わってきます

そのため、同じ案件であっても、金融機関によって金利が1%や2%違うといったような大きな差が出ることもザラです。

長期間に及ぶローンでは金利が1%変わるだけで、返済利息の差は莫大な金額になるため、しっかりと対策・準備をした上で、金融機関を比較・交渉することは必須といえます。

※5,000万円を35年間で借りた場合、金利が1%違うと総返済利息は1,000万円以上も違う!

返済シミュレーション 元金 利息 総返済額
金利1%の場合 50,000,000円 9,279,997円 59,279,997円
金利2%の場合 50,000,000円 19,565,182円 69,565,182円
差額 0円 10,285,185円 10,285,185円

4-2. 同じ案件でも金融機関によって大きく条件が異なる

「アパートローン」と「住宅ローン」では、それぞれ条件が大きく異なるポイントは違いますが、概ね以下のようなポイントで金融機関による大きな条件差が出てきます。

金融機関によって大きく条件が異なる重要ポイント
アパートローン 住宅ローン
1. 融資額 融資額
2. 借入期間 金利
3. 金利 金利の固定期間
4. 金利の固定期間 資金使途の範囲
5. 返済方法 繰上返済の可否及び手数料
6. 連帯保証人の必要有無と人数  −
7. 資金使途の範囲  −
8. 返済開始時期の融通可否  −
9. 繰上返済の可否及び手数料  −
10. 審査の厳しさ  −

前述のとおり、借地の場合には特に「担保評価不足」や「資金使途の範囲」に注意する必要がありますが、これらの点も金融機関によって大きく条件が異なるポイントです。

さらに、「住宅ローン」では返済原資が借入人の年収であるため、簡単には増やせませんが、「アパートローン」の事業性については、建築費や設定賃料の見直しだけで簡単に改善し、良い融資条件を得ることも可能です。

そのため、特に「アパートローン」の場合には、計画が定まった後でも最後の事業性改善検討を行うようにしましょう。

「アパートローン(事業性のローン)」について検討したい方へは、「審査の仕組みから最好の条件で借りる方法まで」詳しくまとめた、以下のページをご参考にして下さい。

アパートローンとは|審査の仕組みと最好の条件で借りるための全知識

Step5. 地主と最終条件を相談・交渉する

  • お互いに重要な内容だからこそ、決して揉めないように冷静に話し合う

建築計画と資金計画がまとまったら、地主と最終条件を相談します。

事前に建て替え承諾を取っているため、ここで建て替えそのものについて揉めるケースは稀ですが、承諾料や更新後の地代の改定等の条件面で揉めないようにすることが大切です。

前述した通り、地主にとっては「建て替え承諾」=「今後数十年間の自己利用の放棄(利用権利の提供)」ですので、相手の事情も理解した上で、相場を参考にしながら、双方の納得のいく条件を冷静に話し合うようにしましょう。

Step6. 借地更新契約書を交わし建て替える

  • 長期間の契約であるため必ず契約書を交わす

借地契約は基本的に20年以上といった長期の契約になるため、契約を交わした当事者がそれぞれ相続で代変わりしてしまい当時のことがよくわからないというケースも多く見かけます。

中には、昔は信頼関係や成り行きで借地していて、そもそも契約書すら結んでいないという場合も意外と多いですが、現代の感覚ではなかなか理解しがたいものがあります。

ローンの場合には当然に契約書は必要になりますが、たとえ自己資金の場合でも、長い間には何が起こるかわかりませんので、必ず合意内容を書面にして契約書として残すようにしましょう。

7. まとめ

いかがでしたでしょうか。

「借地上の建て替え」についての疑問や悩みが解消できたのではないでしょうか。

借地上の建て替えは、自分の意思だけでは進められないため、多少手間は掛かりますが、きちんと理解して上手く進めれば、決して難しいものではありません。

本ページでは「借地上の建て替え」について、重要なポイントは出来る限り網羅的にご紹介してきましたので、上記の内容をしっかりと理解した上で行えば、きっと後悔しない建て替えができるでしょう。

是非、ご自身のニーズに合わせて、最善の計画を実現して下さい。

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