
土地の売り時について、「今は本当に売り時なの?」「いったいいつがベストな売り時なの?」と気になっていませんか?
全国の土地価格は過去20年で見ても高い水準にあり、自宅や投資用の土地売却を検討するには今が絶好の時期であることは間違いありません。
ただ、土地売却では売るタイミング次第で何十万・何百万といった単位で大きな差が生まれる可能性があります。
損をして後悔しないためにも、しっかりと売り時についての判断力を身につけ、賢く売却することが肝心です。
このページでは、元大手不動産会社に勤務し、延べ2,000件以上の不動産売却に携ってきた筆者が、「土地の売り時と賢い売却方法」について、以下の流れに沿ってご紹介します。
すべて読めば、「土地の売り時」について、プロと同等の知識が身につき、賢く売却できるようになるでしょう。
1.結論:土地の売り時は今がベスト!
私は長く不動産業界にいて不動産売買相場を見てきた経験から、以下4つの理由により、「土地の売り時は今がベスト」と言えます。
- 地価が過去20年で最も高い
- 低金利の今なら買い手がつきやすい
- 今後も低金利が続くとは限らない
- 土地を必要とする世帯数は、2023年以降減っていく
理由1. 地価が過去20年で最も高い
今が売り時と言える最大の理由は、土地価格が過去20年で最も高くなっていることです。
2013年以降始まった低金利によって、不動産の取引が活発になり、地価相場は近年上昇を続けてきました。
地価の動きは、国が毎年発表する「公示地価」によってわかりますが、以下の通り、直近の2023年の全国平均は過去20年で最も高くなっています。
データ引用元「国土交通省HP」
よって相場が高い時に売りたいのであれば、まさに今が売り時と言えます。
理由2. 低金利の今なら買い手がつきやすい
今売るべき理由として、次にあげられるのが、2023年現在も続く低金利です。
金利が低いと住宅が売れやすくなるため、土台となる土地も多く売れるようになります。
土地購入の目的として最もメジャーなのが、「新築一戸建てを建てるために土地を買う」というものです。
新築一戸建てを買う際は、土地も含めてローンを組んで購入することが一般的ですが、その返済額は、金利が1%違うだけで、下図の通り大きく変わってきます。
2013年から始まった金融緩和によって、金利は下がり続けました。それによって住宅の買い手は増えていきました。
下図は住宅ローンの固定金利に連動するとされる10年国債の利回り推移です。2013年以降下落し続け、近年は0.5%以下と低く推移しているのがわかります。
引用「SBI証券」
2023年4月時点のメガバンクの住宅ローン金利を以下にまとめました。
変動金利型では1%を切っており、固定金利型(35年)ついても、1%台という低い金利での借入が可能となっています。
変動金利型 | 固定金利型(35年) | |
みずほ銀行 | 0.375~0.675% | 1.48~1.58% |
三菱UFJ銀行 | 0.475% | 1.64% |
三井住友銀行 | 0.475%〜0.725% | 1.79~2.69% |
こうした状況は、住宅と、その土台となる土地の買い手を増やすことから、土地売却の追い風になっていると言えます。
理由3. 今後も低金利が続くとは限らない
金利は日銀や政府の方針によって変わりますが、今後もこうした低金利の方針が続くとは限りません。
これまで1%以下の低金利を維持してきたアメリカ、イギリスといった他国では2022年から3~4%まで金利が引き上げられました。
物価が約10%増と大幅なインフレが起きたことに対し、以下の流れでブレーキをかけるのが狙いです。
- 金利を引き上げ
- 会社や個人が銀行でお金を借りるときの利子が高くなる
- お金を借りにくくなり、全体的に投資や消費が減る
- 景気の過熱が抑えられ、物価が下がる
日本でもウクライナ戦争によるエネルギーや食料品の高騰があり、物価は上がっていますが、上昇率は約3%と世界に比べると低い状況です。
これを受け、2023年時点で日銀のトップは低金利を続ける方針を示していますが、世界的な流れを受けて今後方針を変えることは十分考えられます。
日本だけが低金利を続け、世界と金利差が開くことには、以下のデメリットもあるからです。
- 日本円を売り、金利の高い外貨を買う動きが加速 → 円の価値が下がり円安に
- 円安になると、海外のものが高くなり、輸入に頼る会社は経営が苦しくなる
金利が上がると、以下の流れで相場が下落することは間違いないため、金利が低いの今のうちに、売却に向けて動き出すべきです。
- 住宅ローンを組む買い手の支払い額が増える
- 住宅の買い手が減り、土台となる土地の取引も減る
- 少ない買い手の奪い合いになり、相場が下がる
理由4. 土地を必要とする世帯数は、2023年以降減っていく
以下の表のように、国の専門機関によると、住宅を必要とする人の数は、2023年以降減ると予測されています。
これは、今後土地の買い手が減り、相場も下がる可能性があることを示しています。
1995年〜2021年データ引用元:厚生労働省HP「2021年国民生活基礎調査の概況」
日本では、2010年を境に毎年数十万人規模で人口が減少していますが、核家族化や単身世帯の増加から、世帯数についてはこれまで一貫して増加を続けてきました。
基本的に世帯につき一戸の住宅が求められることから、これまでの住宅業界では、買い手の絶対数に恵まれていたのです。
しかし、国の人口を研究する国立社会保障・人口問題研究所によると、2023年を境に世帯数についても減少に転じることが明らかになっています。
それは、今後住宅を必要とする絶対数が減り、土地を必要とする人も減っていくことを意味しています。買い手の減少は、地価の下落につながって行きます。
こうした面でも今後の地価相場には期待ができないため、少しでも高い時期の売却を狙うのであれば、迷わず今売るべきです。
以上のように、相場や金利といった経済情勢の面では、今が売り時と言って間違いありません。
ただ、土地は売るまでの所有期間などで税金が倍近く変わるため、この点も考慮して売るタイミングは検討すべきです。
次から、具体的に売るタイミングでどう税金が変わるのかを解説していきます。
2.売るタイミングで税金が大きく変わる
- 5年以上所有してから売却すると、税率が約半分になる
- マイホーム取り壊し後、1年以内に跡地を売却すると、3,000万円を売却益から控除できる
土地の売却額が取得費を上回って売却益が出た場合、それは譲渡所得と呼ばれ、譲渡所得税という税金がかかってきます。
売却益から譲渡費用(仲介業者に支払う手数料、建物の解体費、土地の境界確定費等)を差し引くことで、課税対象となる譲渡所得が確定します。
具体的な計算式は以下の通りです。
- 譲渡所得=「売却価格」−「土地の取得費(不明の場合売却価格の5%)」−「譲渡費用」
※譲渡所得がマイナスになった場合、税金はかかりません。
この譲渡所得に対してかかる税金は、土地を売る状況やタイミングによって変わってきます。
2-1. 5年以上所有してから売却すると税率が約半分になる
譲渡所得は、売却物件の所有期間に応じて以下のように分けられ、大きく税率が変わります。
- 「売却した年の1月1日において所有期間が5年超」=「長期譲渡所得」
- 「売却した年の1月1日において所有期間が5年以下」=「短期譲渡所得」
「長期譲渡所得」と「短期譲渡所得」に掛かる税金と税率はそれぞれ以下の通りです。これらについては、自宅用、事業用を問わず適用されます。
長期譲渡所得 | 短期譲渡所得 | |
譲渡所得税率 | 15% | 30% |
復興所得税率 | 所得税×2.1% | |
住民税率 | 5% | 9% |
合計 | 20.315% | 39.63% |
以下は、仮に300万円の譲渡所得が出た場合の税額を長期譲渡所得と短期譲渡所得で比べたものです。倍近い差が出ていることがわかります。
譲渡所得300万円の場合の税額 | ||
長期譲渡所得 (所有5年超で売却) | 609,450円 | |
短期譲渡所得 (所有5年未満で売却) | 1,188,900円 |
税金が約半額になるため、譲渡所得が発生する見込みがある土地を売りたい方は、少なくとも5年以上は所有した上での売却をおすすめします。
※相続した土地については、亡くなった元の所有者の所有期間を引き継ぐことができます。
ex)亡くなった親が10年所有した土地を、相続人の子が所有1年で売却した場合 → 所有は合計11年とみなされ、長期譲渡所得の税率が適用
2-2. マイホーム取り壊し後、1年以内に跡地を売却すると、3,000万円を売却益から控除できる
自宅用地(事業用、別荘等ではない)の売却で発生した譲渡所得については、自宅の解体から一年以内に売却することで、3,000万円までは課税を免除される特例があります。
購入時より余程地価が値上がりしているといった場合でない限り、特例を使うと税額がゼロになる方が大半になります。
このことから、譲渡所得が発生する方で、自宅解体後の土地の売却を検討されている方は、解体から1年以内に売るべきです。
※元自宅を解体せず、古屋付き土地として売り出す場合は、住まなくなった日から3年以内に売ることで、同じく3,000万円控除の特例が適用されます。
3.一年の中では1~3月が売り時
- 買い手が最も多い、1月〜3月の売り出しがベスト
下記は2022年の土地(100〜200㎡)成約件数の月間推移です。3月が最も高いことがわかります。
データ引用元「東日本不動産流通機構」
1月〜3月は例年買い手が多くなるため、他の期間にに比べて高値で売れる可能性が高くなります。
事情が許せば、その期間に売り出せるよう、物件の査定や仲介業者の選定などの売却準備を、を少なくとも10月頃には始めることをおすすめします。
4.こんな土地はそもそも売れない!売り出す前に確認すべき2つのこと
売却を検討している土地が、以下2つに当てはまる方については、土地売却のスタート地点にさえ立てないため注意が必要です。
- 土地の名義人が売主になっていない
- 隣地との境界が確定していない
それぞれ解説していきます。
4-1. 土地の名義人が売主になっていない
土地の名義人が売主自身になっていないと、基本的には売却自体ができません。
現在土地の売却を検討されている方の中には、相続した親族の土地を売却したいと考えている方もいることでしょう。
土地の名義は、名義人が亡くなっても自動的に相続人には変わりません。「相続登記」という手続きを取ることで、初めて名義を変更することができます。
相続登記の手続きは、司法書士に依頼するのが一般的です。名義変更がまだの方は、売却準備を始める前に、最寄りの司法書士事務所に手続きを依頼しましょう。
手続きが完了し、あなた名義の土地の権利証が作成された時点で、売り渡すことが可能になります。
手続きの期間と費用の相場は以下の通りです。
相続登記手続きにかかる期間と費用 | |
期間 | 約2ヶ月 |
費用 | ・司法書士への報酬 10万円前後 ・名義変更にあたっての登録免許税 固定資産税評価額の0.4% (ex) 土地の評価額が1,000万円の場合 → 4万円 |
- そもそも名義人が誰かわからない場合は?
最寄りの法務局で「登記事項証明書」という書類を発行してもらえば、確認ができます。
書類の取得は土地の住所が把握できていれば、どなたでも可能です。
発行には600円の手数料がかかります。
4-2. 隣地との境界が確定していない
隣地との境を明確にするため、それぞれの土地の角にあたる部分には、境界標という杭が埋め込まれています。
画像引用「土地家屋調査士結城輝夫事務所」
しかし、古いものだと、工事の過程で抜き取られたり、地下に埋まってしまっていたり、といったことが起こります。
売却を検討している土地の角に、境界があるか確認してみましょう。一部境界が無かったり、確認ができない場合、そのままでは売り物にならないと言っても過言ではありません。
なぜなら、土地の境界が確定していることは、以下二つの理由により、買主から購入の条件として提示されることがほとんどだからです。
- 境界をめぐって後々隣人とトラブルになることを避けられる。
- 少しのズレで土地面積と価格が大きく変わってくる。
二つ目の面積と価格が変わることについては、下の事例を見ると、売主にとっても影響が大きいことがわかります。
改めて境界を確定させるには、確定測量という手続きを土地家屋調査士というプロに依頼し、正確に境界標を打ち込み、「確定測量図」という、境界の証明書を作成してもらう必要があります。
引用「三井住友トラスト不動産」
境界票の所在が確認できたとしても、古いものだと念のため上記の書類作成までを購入の条件にする買主もいます。
お互いに納得のいく売買取引をするためにも、境界票の有無にかかわらず、上記の書類がない場合は、売却前に確定測量をしておくことをすすめます。
手続きの期間と費用の相場は以下の通りです。
※いずれも土地の面積、隣接地の数によって前後します。以下は100㎡、隣接地が4つの場合の相場です。
境界確定手続きにかかる期間と費用 | |
期間 | 約3ヶ月 |
費用 | 土地家屋調査士への報酬 30〜40万円 ※譲渡費用として譲渡所得から控除できます。 |
各都道府県で土地家屋調査士会のHPが作られており、最寄りの土地家屋調査士が検索できるようになっています。
相談したい方は以下のページから自分の地域のページに進み、個別に問い合わせをしましょう。
日本土地家屋調査士会連合会HP「全国の土地家屋調査士会」
5.売却を決めたら、まずすべき事
ここまで読み終え、自身の物件を売ろうと思い立った方が、まずすべきことを以下の3つのSTEPに沿って紹介していきます。
STEP1.売却価格の相場を知る
まずは自分の物件が大体いくらで売却できそうかの相場をつかみましょう。
おおよその売却額を予想する事は、今後の資金計画を立てる上ではもちろんのこと、何より、下記のような業者に騙されないためにも重要になります。
- 査定の際、売主と仲介の契約をすることだけを目的とし、実現できないにもかかわらず相場とかけ離れた高い査定額を提案してくる。
- 売出し時、価格交渉の手間を省くために、相場よりとても低い売り出し価格を提案してくる。
※上記の詳細はSTEP3で詳しく解説します
そういった業者に対しても、相場を知っている事で「根拠は何ですか?」と問いただすことができるようになり、流されて損をする事を避けられるようになります。
業者に対して「いい加減な事は言えない、できない」と思わせるためにも、少なくとも査定の前には自分で相場を調べておきましょう。
相場を自分で調べるためには、以下3つの方法があります。
- 売出価格で確認
- 実際の取引価格で確認
- 相続税路線価で確認
売出価格で確認
『SUUMO』や『HOME’S』等の大手不動産広告サイトでは、売出中である土地の広告が載っており、自身の土地と近い地域のものを探すことできます。
これらのサイトで売出中の近所の土地が見つかれば、自分が売り出した際の競合物件となる訳ですので、一つの相場判断の参考とすることができます。
一方で、あくまで売出価格にすぎないため、「その価格が適正であるか」や「きちんと成約するか」まではわからないといった点には注意が必要です。
実際の取引価格で確認
2つ目の相場確認方法は、過去の土地売買取引事例がデータベース化されている『土地総合情報システム』で実際の過去の取引価格を確認するというものです。
このサイトは公的機関が運営しており、実際の取引に基づく成約価格を集めたものが公表されたものになりますので、民間サイトの相場検索などと比較しても圧倒的な信頼性があります。
実際に成約した実績をもとにした価格相場を調べることができるため、より実態に合った相場判断の参考にすることができます。
ただ、取引事例が自身の土地の近くにない可能性もあります。その際は、下記の相続税路線価を使って確認をしてみましょう。
相続税路線価で確認
相続税路線価とは、 国税庁が毎年発表しており、相続税の計算に使う土地の評価額を、道路ごとに定めたものになります。
路線価は、公示地価(国が毎年発表する土地取引の基準となる価格)を元に全国の道路ごとに定められているため、自身の土地の周辺に土地の取引事例がない時にも、価格の目安を知ることが可能となります。
相続税路線価は、『全国地価マップ』にて確認ができます。
地図で見ると、道ごとに「155D、130D」といった番号が道ごとに振られているのが分かります。
アルファベットについては無視で構いません。最初の三桁に×1,000をしたものが、相続税路線価(㎡単価)となります。
相続税路線価は、公示地価の8割程度の価格が設定されているため、下記の計算をすることで、実際の取引価格の目安を計算することができます。
- 相続税路線価(最初の三桁×1,000) ÷ 0.8 = 取引価格の目安(㎡単価)
仮に「100D」の道路に接した土地の場合は、
100×1,000÷0.8=125,000
となり、125,000円がその土地の㎡単価の目安となります。
- 場合によっては「固定資産税路線価」での確認もおすすめ
『全国地価マップ』では、相続税路線価以外に、固定資産税路線価についても見られるようになっています。
固定資産税路線価は、市区町村によって発表されるのが3年に一度のため、時価とのズレが生じるというデメリットがあり、基本おすすめできません。
ただ、相続税路線価に比べてより細かい道路にまで価格が設定されているため、住宅地などで入り組んだ土地の価格の目安を把握したいときにはおすすめです。
固定資産税評価額については公示地価の約7割の価格が設定されているため、計算は以下のようになります。
『固定資産税路線価(最初の三桁×1,000) ÷ 0.7 = 取引価格の目安(㎡単価)』
STEP2.売却物件を査定に出す
- まずは一括査定サイトで複数社に査定を依頼しよう
大まかな相場を掴んだら、実際に物件を査定に出しましょう。査定においては、一括査定サイトの利用がおすすめです。
不動産会社は全国に12万社以上あり、その総数はコンビニの約2倍です。
膨大な数の会社の中から、仲介業を専門とし、なおかつ自分の売りたい物件の売却に強い業者を自力で見つけていくのは至難の技です。
しかし、一括査定サイトを利用すれば、サイトにあなたの売りたい物件情報を登録する事で、あなたの物件売却に強い業者をその日のうちに複数社紹介してもらうことができます。
そして、それらの業者に対してあなたの物件の査定を一斉に依頼することが可能になります。具体的な流れは以下の通りです。
不動産の一括査定サイトはいくつもありますが、結論から言うと、大手のNTTグループが運営する『HOME4U』の利用をおすすめします。
理由としては、下記二つの点から他サイトに比べて安全性が高く、良い業者に出会える可能性も高くなると判断できるからです。
- プライバシーマークを取得している
- 大手から中小まで、2,100社以上が登録
プライバシーマークを取得している
プライバシーマークとは、日本産業規格に基づいた基準を満たした事業者のみ使用が認められたものになります。
その個人情報保護の体制や運用の状況が適切であることが公的に認められていることを意味します。
また、『HOME4U』は上場企業であるNTTデータグループが運営しており、運営実績は20年以上と一括査定サイトの中で最も長く、登録業社の厳選も進んでいます。
一括査定サイト利用時は、物件情報のみならず、その他の基本的な個人情報の登録も求められます。安心して情報を提供できるサイトであるメリットは大きいと言えます。
大手から中小まで、2,100社以上が登録
『HOME4U』には、規模を問わず全国2,100社以上の業者が登録されています。
大手の方が中小よりも販売網が広く、売却がしやすいと思われがちですが、そんな事はありません。
全国の不動産会社は「レインズ」という不動産情報システムを使って売り出し物件の情報を共有しています。
売却物件のレインズへの登録は法律で義務付けられており、そこに広告を出して買主を探すという点では、大手も中小も、皆同じ土俵で戦っているといっても過言ではありません。
大手のみを扱った一括査定サイトもある中で、規模を問わず、多様な選択肢の中から業者を選べるという点で、『HOME4U』は優れていると言えます。
机上査定と訪問査定
『HOME4U』の一括査定は、机上査定と訪問査定の2種類どちらかを選ぶことができます。それぞれの意味は以下の通りです。
- 机上査定 → 物件を見ないでネットに登録した物件情報のみで大まかに査定
- 訪問査定 → 実際に仲介業者が物件を見にきて具体的に査定
まずは業者目線での相場を知る機会として、また、良い業者に出会う確率を上げるためにも5~6社に机上査定を依頼してみましょう。
査定が出揃ったら、メールや電話で複数社と連絡をとり、少なくとも2~3社までに絞り込んだ後に、個別に訪問査定を依頼しましょう。
最初から全ての会社に訪問査定を依頼した方がより正確な査定額を早く知ることができますが、日程調整や対面でのやりとりに手間や時間がかかるというデメリットがあります。
また、机上査定の段階でメールや電話で連絡を取り、会って話を聞いてみたいと思える業者を絞り込むことで、訪問査定の手間を省くことも可能になります。
よって、余程時間に余裕があるといった方でない限り、上記のように最初に机上査定を依頼し、2~3社に絞り込んだ上での訪問査定をおすすめします。
業者を選ぶ上での注意点については次のSTEP3で解説します。
STEP3.仲介業者を決定する
複数社の査定が出そろったところで、実際に今後売却活動を共にしていく仲介業者を決定します。
仲介業者は売出し以降の売却の進行役となる大事な存在であり、その選定に失敗すると、後の工程でどれだけ注力しても結局安値で売却することになり後悔するということになりかねません。
そのように最終的に損をしないためには、以下4つのポイントについて押さえておくことが重要になります。
- 高すぎる査定に要注意
- 査定も大事だが、その根拠はもっと大事
- 騙されないために、仲介業者の儲けの仕組みを知ろう
- 最初は一社と専任媒介契約、ダメなら複数社と一般媒介契約へ
高すぎる査定に要注意
- 高額査定を出した業者が、その額で売ってくれるとは限らない
土地の査定は車やピアノの買取査定と異なり、買い手と売買契約が成立するまで売却額は分からず、査定額での売却を保証するものではありません。
土地の売却価格は、買主との価格交渉の後、購入がされるまで確定するものではなく、査定の時点ではあくまで売れる額の予測でしかないのです。
一括査定サイトで複数社に査定を取ると、他社に比べ、極端に高額な査定を提示してくる業者がいることがあります。
もちろん本当にその額で売れると踏んで査定を出している場合もありますが、中には、その額では売れないことを知りながら、高い査定を出している業者も存在します。
売れないと分かっているのに、なぜ高額査定をするの?
他社より高い査定額で売主の気を引き、専任媒介契約(売却を一社に一任する契約)を結ぶことだけが目的です。
業者は、売主と契約をしないことには仲介手数料が得られないため、まずは他社より先に契約を取ることに必死にならざるを得ない事情があります。
結果として、下記のようなことを考えて高額査定を出す業者がどうしても出てきてしまします。
- 「査定額で売る決まりはないし、売り出しの時にでも、理由をつけて値下げを提案すればいい。」
- 「契約ができて、仲介手数料がもらえるのであれば、最終的にいくら安くなろうと関係ない。」
高額査定を出した業者が、売主の「高く売りたい」という望みをかなえてくれるとは限らないのです。
こうした業者に惑わされないためには、査定額よりもその根拠に目を向けることが大事になります。
査定額も大事だが、その根拠はもっと大事
- どのようなマーケティングを行っているかで業者の実力や良し悪しがわかる
不動産の売買は、売り手と買い手の合意で価格が成立する上、全く同じ物件は存在しないため、似た物件の売買事例や相場といったものはあくまで一つの参考にすぎません。
その物件の適正な査定をするにはより具体的なマーケティングが必要になります。
しっかりとしたマーケティングを行なっている業者であれば、査定額の根拠について、その物件固有の事情を見極めて、下記のような項目について具体的な説明があるはずです。
- ターゲットとなる購入者像
- 競合となりうる物件と比較した上で有利、不利な点
- 具体的な販売手法(どのように広告を売っていくか等)
査定の根拠について、納得のいく説明ができる業者こそが、本当にあなたの物件を高く売ってくれる、実力のある業者と言えます。
また、物件のPR力が変わってくるため、あなたの物件がある地域で売買の経験があり、得意エリアとしている営業マンであれば、なお良いです。
騙されないために、仲介業者の儲けの仕組みを知ろう
不動産売却はほとんどが初心者であることが多く、売主の無知につけ込み、自己の利益を優先して売主に損をさせる業者が存在することも事実です。
そういった業者に騙されないためには、業者の儲けの仕組みを知ることが何より重要です。業者の本当の狙いを知ることで、とるべき対策が見えてきます。
片手仲介と両手仲介
仲介手数料の上限は「(売却価格×3%+6万円)+消費税」と宅建業法で決まっています。
売主、買主それぞれに仲介業者がついて売買契約が決まった場合、それぞれの業者が上限の手数料をもらうことになります。これを「片手仲介」といいます。この場合だと、売却価格を大きくした方が業者にとってもメリットが大きくなります。
しかし、売却価格を上げる努力をせずとも、仲介業者が手数料収入を倍にする方法があります。
それは「両手仲介」といって、売主、買主両方の仲介を担当し、一社で上限の手数料を双方からもらうというものです。
下表は、業者があなたの物件を片手仲介で2,500万円で売った場合と、両手仲介で2,000万円で売った場合の仲介業者の利益を比べたものです。
売却価格 | 仲介業者の利益 | |
片手仲介 | 2,500万円 | 891,000円 |
両手仲介 | 2,000万円 (500万円down) | 1,452,000円 (56.1万円up) |
500万円も安く売却しているにもかかわらず、業者の利益が両手取引によって1.5倍以上も大きくなっていることがわかります。
買主からすれば、できるだけ安く買いたいと思っているのは当然です。
両手取引を成立させたい業者は、売主の意に反して、価格を大きく下げることで買主を引きつけ、話をまとめようと動き出します。
売り出し時に、相場より不自然に低い売り出し価格を業者に提案された場合は、こうした思惑が隠れている可能性があります。
そうした提案があった時は、流されずに、あなたにとって納得のいく根拠があっての判断か、業者側にしっかり確認を取るようにしましょう。
売主が損をする「物件の囲い込み」
土地を少しでも高く売るために、絶対に避けるべき業者があります。それは、「物件の囲い込み」をする業者です。
囲い込みとは簡単に言うと、「両手仲介の手数料欲しさに、他社を通して来た買主と売主の売買契約を妨害すること」を言います。
宅建業法により、仲介業者は売却を依頼された物件をレインズという不動産情報システムに登録することが義務付けられています。
レインズの物件情報は全国の不動産会社がネットを通して見られるようになっており、買い手側の仲介業者がそれを見て買い付けを行い、売買契約が成立する仕組みになっています。
しかし、自身で買主を見つけて両手仲介を行うことを狙った業者は、レインズを見てきた他の業者からの買い付けや内覧の問い合わせに、以下のような回答で断りを入れてしまいます。
- 現在商談中でご紹介できません。
- すでに他のお客様から申し込みをいただいております。
実際には売り出し中で買主が見つかっていないにもかかわらず、手数料を取られたくないために嘘の回答をするのです。
売主にとって喜ばしい高い金額での買い付けであっても、両手仲介の手数料に比べたら儲けが少なくなるのは明らかなため、それは変わりません。
囲い込みをする担当者がついた時点で、売主の高く売るという目標は後回しにされてしまうのです。
囲い込みをさせないために
仲介業者がレインズにあなたの物件を登録すると、登録証明書という書類を発行してもらえるようになります。
発行された登録証明書に記載されたIDとパスワードを使うと、売主の依頼した物件の登録状況のみ、リアルタイムで確認ができるようになります。
レインズに登録しても、取引状況を「申込み有り」や「一時紹介停止中」に設定して囲い込みを行い、売主が知らないのをいいことに証明書自体を売主に渡さない業者もいます。
しかし、証明書の発行を依頼し、さらにシステムで確認することで、そういった行為を防ぐことが可能です。
こうした対策をとっても、他社からの問い合わせに嘘をついて囲い込みをすることもあり、一部の片手仲介専門業者に頼む以外、100%囲い込みを防ぐ方法というのは存在しません。
ただ、仲介業者を決定する段階において、以下のような質問を投げかけてみるだけで、囲い込みのリスクはぐっと減らすことができるようになります。
- 御社は両手仲介前提ですか?
- レインズに登録したら、登録証明書は発行してもらえますか?
業界について知っていることを示し、「この売主には適当なことは言えない、できない」と思わせることで、業者が安易に自分の利益を優先した行動ができなくなるからです。
- 片手仲介を公言しているSRE不動産
ソニーグループの運営する『SRE不動産』は、売主と買主どちらかの仲介に特化すること(片手仲介)を公言している日本で唯一の大手不動産会社です。売主の仲介業者が、高く買ってくれる買主を見つけてくることもあるため、両手仲介自体は悪いことではありません。
しかし、囲い込みによって売主が損をするリスクがどうしても付きまといます。
両手仲介は米国等の海外諸国では禁止されており、片手仲介が円満な売買契約のための最も合理的なシステムであることは、世界的にも常識となっています。
『SRE不動産』は片手仲介のみを行い、売主の高く売るという意向に沿った仲介を必ずしてくれるという点でメリットが大きいと言えます。
対応可能なエリアである、首都圏、大阪、兵庫、奈良、京都での売却を検討されている方は利用をおすすめします。
最初は一社と専任媒介契約、ダメなら複数社と一般媒介契約へ
- 専任媒介契約の方が、業者に優先的に動いてもらえるようになり、売主にとってのメリットも大きい。
仲介業者との契約には、大きく分けて、以下の二つがあります。
- 専任媒介契約
- 一般媒介契約
専任媒介契約が一社のみへの売却依頼であるのに対し、一般媒介契約では複数社に同時に売却依頼ができるという点が大きな違いです。
また、専任媒介契約では、物件のレインズへの登録や売主への定期的な報告の義務があるのに対し、一般媒介契約ではそれがないという点で異なります。
結論から言うと、契約するならまずは専任媒介契約を一社と結ぶことをおすすめします。
一般媒介契約は以下のようなデメリットがあるため、おすすめできません。
- 業者にとって、「広告やPRを頑張っても、他社が買主を見つけて自身の努力が水の泡になる」という不安と隣り合わせの契約であり、本腰を入れてもらえないことが多い。
- 業者にレインズへの登録義務がないことから、物件情報が広がらないリスクがある。
反面、専任媒介契約は、業者にとって他社に契約を取られるリスクもないため、なんとか契約期間内(最大3ヶ月)に自社で売り切ろうと、優先的に動いてもらえるようになります。
専任媒介契約には、以下のように「専任媒介契約」と「専属専任媒介契約」の二種類があり、最終的にはどちらかを選ぶ必要があります。
専任媒介契約 | 専属専任媒介契約 | |
業者側の義務 | ・2週に一回は売主に販売状況を報告する ・契約から7日以内にレインズに物件を登録する | ・1週に一回は売主に販売状況を報告する ・契約から5日以内にレインズに物件を登録する |
売主が自分で買主を見つけること | 可能 | 不可能 |
どちらも一般媒介契約に比べて優先的に動いてもらえる点では変わりません。
ただ、後段の売主が自分で買主を見つけられるか否かについては大きな違いとなります。
身近な知人や親戚等の中から、自分の物件を買ってくれる人が見つかる見込みのある方は、左の専任媒介契約の方を必ず選んでおきましょう。
最初の一社でうまくいかなかった場合は一般媒介契約もあり
一般媒介契約については、業者に販売活動の優先度を下げられるリスクはあるものの、一社に依存せず手広く依頼できるという点では試す価値はあります。
最初に専任媒介契約を結んだ業者で納得のいく売却ができなかった場合は、複数社との一般媒介契約に切り替えて売り出しをしてみることをおすすめします。
6. まとめ
いかがでしたでしょうか。
「土地の売り時判断や賢く売却する方法」についての疑問や悩みが解消できたのではないでしょうか。
土地を少しでも高く売るためには、売り時を間違えないことはもちろんですが、最良のパートナーとなる信頼できる仲介業者を選ぶことなど、最初のステップが肝心です。
本ページでは「土地の売り時判断や賢く売却する方法」について、重要なポイントは出来る限り網羅的にご紹介してきました。
上記の内容をしっかりと理解した上で、後悔しない上手な売却を検討してみて下さい。
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